
組み込みエンジニアを目指したいけど、何の言語から学べばいいんだろう?
この記事では、こんな悩みを抱えている未経験から組み込み開発に関わりたい方に向けて、現場で使われている代表的なプログラミング言語5つを解説します。
それぞれの言語の特徴や実際に使われる場面、初心者におすすめの学び方も紹介します。

学習の方向性に迷っている方はぜひ参考にしてみてください!
組み込み開発とは?どんなことをする仕事?

「組み込み開発」って、聞いたことはあるけど具体的にはよくわからない…
という方に向けて説明すると、実は、私たちの身の回りにある「家電」や「自動車」「医療機器」など、さまざまなモノの中には小さなコンピューターが組み込まれていて、それらを動かしている“制御プログラム”が存在します。
このような「モノを動かす」ためのプログラムを書くのが、組み込み開発の仕事です。
この章では、こんなことを解説しています。
- 組み込み開発とは何か
- どんな分野で使われているのか
- どんな言語が使われるのか
組み込み開発とは

組み込み開発では、家電製品や医療機器、自動車などの「ハードウェア」に「ソフトウェア」を組み込みます。
「ハードウェア」と「ソフトウェア」は、人間で言うと「身体」と「脳」のようなイメージです。
(細かいことを言うと「マイコン」も重要なのですが、少しややこしくなるためここでは割愛します。)
ハードウェア=機械
ソフトウェア=機械を動かすためのプログラム
を指していて、組み込むためのプログラムを作るのが主な仕事です。
たとえば炊飯器で「早炊きモード」や「保温モード」を切り替えるのも、内部ではプログラムが動いていますし、車のブレーキ制御や、テレビのリモコン操作なども、すべて組み込み開発によって実現されています。
組み込み製品の動作例を挙げると、こんなものがあります。
- 炊飯器で「早炊きモード」や「保温モード」を切り替える
- 車のブレーキを制御する
- テレビをリモコンで操作する
パソコンやスマートフォンのアプリ開発とは異なり、ハードウェア(物理的な機械)と密接に関わる点が特徴で、「限られたメモリ・電力・処理能力の中で、安定して正確に動作させること」が求められる仕事です。
家電・車・医療機器など身近なモノを動かす仕事

組み込みシステムは、家電製品・自動車・産業機器・医療機器・IoT製品など、私たちの生活を支える多くのモノに使われています。
具体的にはこんなモノに組み込まれています。
- 家電製品(電子レンジや洗濯機など)
- 乗り物(自動車、飛行機、電車など)
- 医療機器(心拍モニターやMRIなど)
- IoT製品(スマートスピーカーやスマートロックなど)
それぞれの製品ごとに、動作のタイミングや安全性、消費電力などの要件が異なるため、組み込み開発では目的に応じた柔軟な設計と、高い技術力が必要とされます。

正直、目立つ仕事ではないけれど、社会を支える縁の下の力持ちです!
使われる言語には特徴がある

組み込み開発で使われる言語は、以下のような特徴があります。
- 処理速度が速い
- ハードウェアに近い処理がしやすい
- メモリ管理がしやすい
家電や車を操作しようとした時、ボタンを押したらすぐに反応してほしいですよね。そのため、少しでも早くハードウェアを制御できるように処理速度が速い、という特徴があります。
また、「メモリが増える」=「製品としての販売価格が高くなる」ということになるので、メモリ管理のしやすさも求められます。
詳しくは次章「組み込み開発で求められる知識とスキル」で説明します!
組み込み開発で求められる知識とスキル
ハードとソフトの連携制御が前提

組み込み開発は、家電製品や医療機器、自動車などの「ハードウェア」に「ソフトウェア」を組み込みます。
そのため、プログラミングのスキルだけではなくマイコンやハードウェアの知識も必要になります。
マイコンとは「マイクロコントローラ 」の略で、ハードウェアを制御するための電子機器です。マイコンのメーカーによって性能や制御手順が異なるため、開発する製品に合わせてメーカーや品番を選定します。
ハードウェアの知識とは、具体的に言うと電気回路の知識になります。また、作ったプログラムをテストするために評価用のボードを使用する必要があり、ボード上で結線作業などもする場合があります。
限られたリソースで動かす

「リソース」とは、直訳すると「資源」や「資産」という意味です。
製品に組み込めるソフトウェアの大きさは限られています。
SDカードやスマートフォンなどでも、16GB(ギガバイト)、32GB、64GB…と容量が大きくなるほど値段が高くなりますよね。
組み込み製品でも同様に、ソフトウェアを組み込むための容量を大きくすればするほど、費用が高くなります。
そのため、「必要な機能はすべて搭載するけど、できるだけソフトウェアの容量は抑えて製品を安くしたい」ということから、ソフトウェアのサイズを限られたリソースの中に収める、という制約が発生します。
セキュリティ対策が重要

近年、家電製品や医療機器、自動車など、多くの組み込み製品がインターネットにつながるようになってきています。
離れた場所からも操作できるなど非常に便利な反面、インターネット通信をのぞき見されたり、攻撃されたりするなどのリスクも潜んでいます。
最悪のケースではハッキングされて他人から操作されてしまうようなことも考えられます。
そのため、令和の組み込み開発ではセキュリティ対策も非常に重要です。
AIなど新技術への対応

AI(人工知能)の進化により、組み込み製品にもAIが導入されて高度な機能が実現できるようになりました。
例えば、以下のようなことです。
- 家電製品:人の動きに合わせて動作を切り替える
- 自動車 :自動運転
- 医療機器:各データから病名分析、診断
今後もAIの機能はどんどん増えていくと予想されるので、組み込み製品にもAIを扱うのに適したプログラミング言語の需要が高まりつつあります。
組み込みでよく使われるプログラミング言語
C言語|最重要言語。現場での使用率ダントツ
開発年 | 1972年 |
特徴 | プログラムの実行速度が速い プログラムのサイズが小さい ハードウェアの制御が可能 自由度が高い |
製品例 | 家電製品 自動車 医療機器 産業用ロボット |
C言語は組み込み製品で主に使用される言語です。

自分も使っているのはほぼC言語です!
ごくまれにアセンブリ言語(後述)を使います。
ハードウェアを制御することができ、実行速度も速いことから、機械を操作するのに適しているため、組み込み製品に向いています。
また、プログラムのサイズが小さいことも、リソース制約がある組み込み開発に向いている理由の一つです。
C++|Cを拡張したオブジェクト指向型
開発年 | 1983年 |
特徴 | C言語の派生 C言語より複雑な構造 ハードウェアの制御が可能 |
製品例 | 家電製品 医療機器 産業用機械 IoTデバイス |
C++はC言語から派生した言語です。C言語と同じくハードウェアの制御が可能なため、組み込み製品でも多く使われます。
C言語と比較すると複雑な構造になっているため、十分理解していないと誤った使い方をしてしまう危険性が高くなっています。
アセンブリ言語|マイコン制御に強い低レベル言語
開発年 | 1940年代 |
特徴 | 機械語に近い 特定のハードウェアで使用 製品によって文法が異なる |
製品例 | マイクロコントローラ デバイスドライバ リアルタイムシステム ファームウェア |
アセンブリ言語は、なんと1940年代から使われている歴史のある言語です。
ソフトウェアは以下のような流れで、機械語と呼ばれる「1」と「0」の組合せの言語に翻訳されます。
- 人間が分かる言語でプログラミング
- 機械が分かる機械語に翻訳
- コンピュータが機械語を実行
アセンブリ言語は機械語に近い言語で、機械(=ハードウェア)に近い部品で使用されるという特徴があります。

自分も基本はC言語で、「この処理はアセンブリ言語で書いてね!」というハードウェア特有の制約などがある場合にアセンブリ言語を使用しています
Java|組み込みAndroid端末や業務機器向け
開発年 | 1996年 |
特徴 | C++と似た構文 組み込み以外でも幅広く使用 高いセキュリティ性 |
製品例 | 自動販売機 エアコン カーナビ IoTデバイス |
Javaは組み込み製品以外にもWebサービスやアプリなどさまざまな用途で使われる言語です。
開発当初からセキュリティを考慮した設計のため、他のプログラミング言語よりもセキュリティの安全性が高いという特徴があります。
インターネットとつながる組み込み製品にはセキュリティが重要なため、安全性が高いJavaは組み込み製品に適した言語となっています。
Python|IoTやAI開発との相性◎
開発年 | 1991年 |
特徴 | C言語で作られている 単純で簡潔な文法 AI開発で多く使用される |
製品例 | スマートホームデバイス 農業用センサー 医療機器 自動者の自動運転 |
PythonはC言語で作られているプログラミング言語です。
単純で誰が見ても分かりやすい文法となっていますが、引き換えにC言語と比較すると処理速度は遅いです。
そのため、Python単体ではなくC言語との組み合わせで使用されることが多いです。
AI(人工知能)開発で使用されることが多い言語で、AI機能を搭載する組み込み製品にも使われるようになってきています。
初心者が最初に学ぶならどの言語?
最初の1つはC言語がおすすめな理由

組み込み開発を目指すのであれば、最初に学ぶプログラミング言語として C言語は非常におすすめです。
その理由は、次のような点にあります。
- 多くの組み込み製品で使われている
- 低レイヤの知識が身につく
- 他の言語への応用がきく
ひとつずつ解説していきます。
多くの組み込み製品で使われている
C言語は、家電製品、自動車、医療機器など、今でも幅広く使われています。現場で「動いているコード」の多くがC言語で書かれているため、学んでおくことで現実の開発に役立ちます。
低レイヤの知識が身につく
C言語は、メモリの扱い、ポインタなどの概念が必須です。これは一見難しく感じられますが、ハードウェアを直接操作する組み込み開発においては非常に重要なスキル。基礎からしっかり理解する力がつきます。
他の言語への応用がきく
C言語で得た知識は、C++やJava、Pythonといった高水準言語にも活かせます。プログラミングの「共通言語」としての役割も果たします。

初心者にとっては少しハードルが高いかもしれませんが、C言語は「プログラミングの土台」を作るのにぴったりな言語です。
PythonやJavaも将来性あり

組み込み開発に限らず、汎用性や将来性の高さで人気の言語としては、PythonやJavaもおすすめです。
Python
AI、データ分析、IoT開発との相性が良く、簡潔な文法で初心者にも人気。最近では組み込みデバイス上でもPython(MicroPythonなど)が動く環境が増えてきています。
Java
Androidアプリや業務システムなどで今なお多く使われており、組み込み分野でも大型機器向けには使われることがあります。オブジェクト指向の基礎も学べます。
将来的にキャリアの幅を広げたい場合は、C言語を基礎として学んだ後、PythonやJavaに進むのもひとつの選択肢です。
学ぶ順番や学習ロードマップの例

結局組み込み開発に挑戦するならどの順番で学ぶのが良いの?
という疑問に対しては、次のようなステップ型のロードマップが参考になります。
- C言語の基礎を学ぶ
文法、制御構文、ポインタ、関数、構造体などを理解する - マイコン開発の入門に触れる
ArduinoやMbedなど、初心者でも扱いやすい開発環境で動かす経験を積む - 組み込み向けのOSやデバイス制御を学ぶ
OSやハードウェア制御(GPIO、タイマーなど)に挑戦
ポイントは、最初から「全部を完璧にやろうとしないこと」です。
まずは C言語+実機で動かす経験を優先して、徐々にレベルを広げていくことが成功への近道です。
まとめ
組み込み開発はモノを動かす面白さがある一方で、制約やリスクにも向き合う必要がある奥が深い仕事です。
「自分は絶対に組み込み開発をやるんだ!」という思いがある方は、まずは王道のC言語の学習から始めるのがオススメです。
C言語が無料で学べるサイトや、有料にはなりますがC言語や組み込み開発をプロが指導してくれるプログラミングスクールを紹介した記事も書いているので、よければ参考にしてみてくださいね。



最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
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